長崎市から福島市への派遣職員

被災地で自分の能力を活かしきれないジレンマと業務改善の提案


少し日焼けした顔、東北とはまた異なる口調で語るのは島田清隆さん。復興支援のため福島市政策推進部危機管理室放射線総合対策課で活躍する長崎市役所からの派遣職員だ。


突然起きた未曾有の国難。福島に親戚や友人がいた訳ではない。放射能に対する不安もあった。それでも被災地支援のため庁内公募に手を挙げずにはいられなかった。30代は自分のために頑張ってきた。40歳、人生の折り返し地点だ。この先、一人の人間として世の中のために何ができるのかを考えたという。






島田さん
長崎市から福島市へ派遣された島田さん

派遣前の所属は消費者センター。消費生活相談を受けトラブルの解決方法などのアドバイスをする消費生活専門相談員の資格も持っている。放射能や除染についての知識や経験はなくとも、相談対応に消費生活相談という自分の経験が役に立つと考えた。実際には方言が分からない、代替案を提示できない、末端の現場ではどうしてあげることもできない相談が多い。ノウハウが活用できない状況にストレスを感じることも少なくない。それでも自らの果たすべき役割、出来ることを考えながら日々業務に励んでいる。








他自治体からの派遣職員だからこそ見えることがある。例えば福島市役所では文書ファイリングシステムが未整備だ。これでは調べたい情報がどこにあるのか分かりにくい。結論だけではなくそれに至るまでのプロセスが大事であり、なぜその結論になったのかを把握し、組織として切れ目のない事務を続けるためには、時系列で整理された文書ファイリングと情報の共有は必要だ。また、県庁所在地であるメリットをもっと活かして担当者レベルで県職員と連携してほしい。日頃からの情報蓄積と共有、そして人と人との繋がりがあってこそ想定できない事態での迅速で正確な判断とスムーズな対応に繋がると同僚に改善の提案をする。


派遣期間は3月末まで。あと何日あるのか、残りの期間で自分に何ができるのかを常に意識しているという。休日もボランティア支援などで出勤することもある。「毎日宿舎と市役所の往復、街並みをゆっくり見る時間がないのは残念ですが、色々な人と出会えることは良かったです」という。


「ボランティアは除染や瓦礫の撤去だけではないのです。例えば高齢者の買い物代行でも良いと思う。福島のためにできることをやってくれる人をつなぎとめたいと思います」。故郷に帰っても福島のことを考え行動し続けるだろう。


(取材日:2011年12月9日 ネットアクション事務局 山形信介)


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