何回か話しかけるうちに自然とお年寄りの方とも仲良くなれたりして

 

池本さん

「震災後すぐに災害支援NPOは連絡をとりあい、被災地にヘリコプターや救助犬を派遣した。普段からのつながりが本当に大切なんです」

こう話すのは全国にNPOのネットワークをもつNPO事業サポートセンター専務理事の池本修悟さん。自身も3月後半から被災地に駆けつけ、多くの方が家を失い避難所での生活を余儀なくされたのを目の当たりにした。「被災地へ行かないとわからないことが多かった。被災者の方が何を必要としているのか遠くから情報がつかめないことにくやしさを感じた。これは各省庁の職員も同じだった」。そこで、文科省と連携し避難所にパソコンを設置し、インターネットを活用した支援を行う「復興支援ITボランティア」を立ち上げた。ボランティア活動のベースの資金はヤフーからの寄付。パソコンやネット回線は、日本マイクロソフトをはじめICT業者各社で形成する「ICTキャラバン隊」やJEITA「ICT支援応援隊」が無償で提供してくれた。

 

 

NPO事業サポートセンターは情報ボランティアと呼ばれる人たちを現地に派遣し、パソコンを使って現地の方々に必要な情報を提供するだけではなく、避難所の状況を積極的に外に発信するサポートも行なった。「例えば、ある女子大生は、避難所でおばあさんと話をして女性用下着の不足に気がつき、下着メーカーにメールで窮状を訴えたんです。そうしたところ、メーカーもすぐに商品を届けてくれたんですよ」

 

こうした現地で活躍する情報ボランティアについて、「最初はみんなただの御用聞き。でも、何回か話しかけるうちに自然とお年寄りの方とも仲良くなれたりして、そうなると逆にお年寄りの方から『こんなこともしらないの』って笑って教えてもらったりもする。これが本当の情報ボランティアだと思うんですよね。教えることだけがサポートじゃないんですよ」と池本さん。パソコンは人と人のコミュニケーションを作り出すきっかけにもなっている。「パソコンは足湯ボランティアみたいなもの。足湯につかってもらい手もみマッサージをしている時間のみんなでおしゃべりが貴重な情報源。僕らもワードやエクセルの使い方をお伝えしながら被災地の現状を教えてもらっています」。パソコンをきっかけに、現地の方々とコミュニケーションをとることができたらいいな。そんな池本さんの想いがこの言葉に込められていた。

 

こうした活動を行うきっかけとなったのは、阪神淡路大震災のとき。大阪府出身の池本さんは、当時はまだ高校生で京都の学校に通っていた。「あの時は震災が起きたのに何もしなかった。次の日から普通に学校に通ってたんですよね。でも、いつも神戸と反対方向へ通っている自分に、何か変だなぁと思っていた」。そんな気持ちが大学に入ってさらに高まった。「大学でいろんなやつと知り合った。そのときに、高校で何もしていない自分に負い目を感じた。あ~自分は何もしていなかったと」

 

だからこそ、今回は何もせずにはいられなかったのだろう。「NPOだからこそできることがある。何かがないと動けないじゃなくて、やらなきゃいけないから動かないと」。びっしり埋まったスケジュール帳が、その言葉を物語っていた。

 

(取材日:2012年1月18日 ネットアクション事務局 山田勝紀)